今年の弁理士試験論文試験特許その1(問題Ⅰ)

こんにちは、GODIVEです。投稿遅くなり失礼致します。

さて今回は、「今年の弁理士試験論文試験特許その1(問題Ⅰ)」です。

 

問題Ⅰのはじめは、職務発明、特許を受ける権利の譲渡と対抗要件、です。

1 甲株式会社は、農作業機のメーカーである。甲には勤務規則があり、「従業者が甲に在籍している間にした発明についての特許を受ける権利は、あらゆる種類の発明について、当該発明のなされた経緯等にかかわらず、当該発明が完成した時点で、甲が取得する。」旨が規定されている。

甲の従業者である乙は、入社以降一貫して甲の農作業機に関する開発部門に所属し、甲における上司の業務上の命を受け、甲の設備を利用して、勤務時間中に開発を進め、令和4年2月に農作業機に関する発明イを完成した。

甲は、同年3月に、発明イについての特許を受ける権利を、丙に譲渡した。しかし、甲は、当該権利を丙に譲渡した事実を失念してしまい、同年4月に、当該権利を、丁にも譲渡した。

そして、乙は、同年5月に、発明イについて特許出願Aをし、丁は、同年6月に、発明イについて特許出願Bをし、丙は、同年7月に、発明イについて特許出願Cをした。

その後、特許出願A、B、Cは、出願公開がされた。丁は、出願公開がされた特許出願A、Cをみて、乙及び丙が発明イについて特許出願をしている事実に気が付いた。

以上を前提に、以下の設問に答えよ。解答は、法律上の根拠がある場合にはそれを提示するものとする。設問に示されていない事実をあえて仮定して論じる必要はない。

(1) 発明イが職務発明(特許法第 35 条)に該当するか、説明せよ。

(2) 勤務規則の内容も考慮し、発明イが完成した時点で、発明イについての特許を受ける権利が甲に帰属する理由を説明せよ。

(3) (1)、(2)を前提に、丁は、乙に対して、発明イについての特許を受ける権利が丁に帰属していると主張できるか、説明せよ。

(4) (1)、(2)を前提に、丁は、丙に対して、発明イについての特許を受ける権利が丁に帰属していると主張できるか、説明せよ。

 

(1)について

特許法35条1項についての確認かと存じます。

 発明イが職務発明に該当

・甲の従業者である乙は、入社以降一貫して甲の農作業機に関する開発部門に所属し、

甲における上司の業務上の命を受け・・・・・

⇒いわゆる使用者(甲)の業務範囲

・甲の設備を利用して、勤務時間中に開発を進め令和4年2月に農作業機に関する発明イを完成・・・・・

⇒使用者(甲)における乙の現在の職務に該当

⇒甲の従業者である乙が発明

(2)について

特許法35条2項(いわゆる反対解釈)についての確認かと存じます。

 発明イについての特許を受ける権利が甲に帰属する理由

「・・・発明イが職務発明である場合を除き・・・・」

⇒(1)であったように、発明イが職務発明なので、当該勤務規則「発明イが完成した時点で甲が(特許を受ける権利)を取得」があるため。

(3)について

 丁は、乙に対して、発明イについての特許を受ける権利が丁に帰属していると主張できる

⇒(2)により、乙は特許を受ける権利を有さないため。

 特許を受ける権利を有する甲から、丁は当該権利を譲り受けた(特許法33条1項)。

⇒なお、この試験では以下までは問われていないと想定:

乙の出願Bは、特許を受ける権利を有していない出願のためいわゆる冒認出願で拒絶理由であり(特許法49条7号)、はじめからなかったものとみなされる(特許法39条5項)

(4)について

 丁は、丙に対して、発明イについての特許を受ける権利が丁に帰属していると主張できる

⇒特許出願前における特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をしなければ、第三者に対抗することができない(特許法34条1項)

⇒丁は(6月に)、丙(7月)より先に特許出願丁を実行したため。

以上です。

 

次回はまた弁理士試験論文試験特許ネタをUP予定です。

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