今年の弁理士試験論文試験特許その2(問題Ⅰその2)

こんにちは、GODIVEです。投稿遅くなり失礼致します。
さて今回は、「今年の弁理士試験論文試験特許その2(問題Ⅰその2)」です。

問題Ⅰその2
2  日本国に在住するパリ条約の同盟国Xの国民甲は、2022 年6月1日にX国において実用新案登録出願Aを適式に出願した。実用新案登録出願Aは、同年 12 月7日にX国の実用新案掲載公報に掲載され、出願Aに係る出願書類全体が公開された。甲は、2023年5月1日に、日本国に在住する日本国の弁理士である乙に対して、実用新案登録出願Aを優先権の主張の基礎として、日本国に特許出願をするように依頼した。
 以上を前提に、以下の設問(1)~(3)に答えよ。解答は、法律上の根拠がある場合にはそれを提示するものとする。特に明示した場合を除き、各設問はそれぞれ独立しているものとし、設問に示されていない事実をあえて仮定して論じる必要はない。
(1) 甲は、2023 年4月1日に、実用新案登録出願Aに係る実用新案権を放棄した。この場合、甲は、X国における実用新案登録出願Aに基づく優先権を主張して、優先期間内に日本国において特許出願をすることができるか説明せよ。
(2) 乙は、甲からの依頼に従って、特許出願の準備をしたものの、乙は優先期間を徒過した 2023 年6月5日に特許出願をし忘れていたことに気が付いた。この場合、乙は、どのような対応をすべきか特許法の規定に基づいて説明せよ。
(3) 甲は、乙に対し、出願Aに基づく優先権を主張して、請求項1及び2をそれぞれ発明イ及び発明ロとした特許出願をするように依頼した。乙は、甲の依頼に従った特許出願Bを 2023 年5月 24 日にした。実用新案登録出願Aの実用新案登録請求の範囲には、考案イのみが記載され、出願書類全体には、考案イ及びロが記載されている。発明イ及びロは考案イ及びロとそれぞれ同一である。出願Bの請求項2に係る発明ロは、出願Bの出願前に実用新案登録出願Aの実用新案掲載公報が発行されたことにより、特許法 29 条1項3号に掲げる発明に該当するとして、出願Bが拒絶の理由を有するか、説明せよ。
 なお、(1)において解答した法律上の根拠は、再度解答する必要はない。

⇒パリ要約の優先権の理解を問われているかと存じます。
  第4条 優先権
A.
(1) いずれかの同盟国において正規に特許出願若しくは実用新案,意匠若しくは商標の登録出願をした者又はその承継人は,他の同盟国において出願することに関し,以下に定める期間中優先権を有する。
(2) 各同盟国の国内法令又は同盟国の間で締結された2国間若しくは多数国間の条約により正規の国内出願とされるすべての出願は,優先権を生じさせるものと認められる。
(3) 正規の国内出願とは,結果のいかんを問わず,当該国に出願をした日付を確定するために十分なすべての出願をいう。
など

設問(1)について
パリ優先権の発生要件及び主張要件を問われているかと存じます。以下検討から、
「優先機関に日本国において特許出願することができる」ということになるかと存じます。
<優先権の発生要件の検討>
・パリ同盟国Xの国民である甲が、X国に実用新案登録出願A(パリ4条A⑴)
・Aに係る実用新案権が放棄されているが、Xは正規の国内出願(同条A⑶)
<優先権の主張要件の検討>
・Aの出願人甲が(パリ4条A⑴)、パリ同盟国の日本国に、優先期間内に特許出願(同条A⑴・C⑴)
・実用新案登録出願に基づく優先権を主張して特許出願(同条E⑵)

設問(2)について
 特許法43条及び43条の2などが問われているかと存じます。
パリ条約の例による優先権主張を伴う特許出願(43 条の2第1項)
・優先期間経過後2月以内であり、故意に出願をしなかったものでもない(同項、施規 27
条の4の2第2項)。
・優先権主張書面、優先権証明書の提出に加え(43 条1項・2項準用)、回復理由書の提出
と回復手数料の納付を要する(特施規 27 条の4の2第4項準用、195 条2項別表 11 号)

設問(3)について
 この設問では、パリ条約4条B及びHについての理解が問われているかと存じます。
パリ条約4条B
 すなわち,A(1)に規定する期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は,その間に行われた行為,例えば,他の出願,当該発明の公表又は実施,当該意匠に係る物品の販売,当該商標の使用等によって不利な取扱いを受けないものとし,また,これらの行為は,第三者のいかなる権利又は使用の権能をも生じさせない。優先権の基礎となる最初の出願の日前に第三者が取得した権利に関しては,各同盟国の国内法令の定めるところによる。
パリ条約4条H
 優先権は,発明の構成部分で当該優先権の主張に係るものが最初の出願において請求の範囲内のものとして記載されていないことを理由としては,否認することができない。ただし,最初の出願に係る出願書類の全体により当該構成部分が明らかにされている場合に限る。
・出願書類全体にはイ・ロが記載→イ・ロに優先権の効果が認められる(パリ4条H)
・イ・ロは、いずれも当該公報発行によって不利な取り扱いを受けない(パリ4条B)
→ ロは、Aの公報発行により、29 条1項3号に該当するとの拒絶の理由を有しない。
 

次回は特許法の問題Ⅱについて触れる予定です。
 引き続き宜しくお願い致します。

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