今年の弁理士試験論文試験特許その5(問題Ⅱその3)

こんにちは、GODIVEです。投稿遅くなり失礼致します。
3回かけて、弁理士論文試験特許の侵害系統の問題についてコメント等記載していきますが、今回は3回目です。
今回は、損害賠償額の算定についてです。宜しくお願い致します。

↓以下問題など

令和6年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [特許・実用新案]【問題Ⅱ】  より抜粋

甲は、塗料に係る特許発明イ(以下「発明イ」という。)についての特許権Pの特許権者であり、発明イの実施製品である塗料aを製造販売している。特許権Pの特許請求の範囲には「塗膜成分A及び溶剤を含み、前記溶剤は、化合物B、C及びDの中から選択される塗料。」と記載されており、明細書には、発明イの作用効果として、塗膜成分Aを用いることにより耐水性が高い塗料を提供可能である旨が記載されている。
甲は、特許権Pに係る発明イの実施について他人に許諾したことはない。
乙は、特許権Pに係る特許出願の日後から現在に至るまで、塗料bを製造販売している。
また、特許権Pに係る特許に無効理由はないものとする。
以上の事実関係を前提に、以下の各設問に答えよ。
なお、問題に示されていない事実をあえて仮定して論じる必要はない。

3 丙は、甲の特許出願に係る発明イの内容を知らずに、自ら、発明イと同一の発明をし、その特許出願の日前に、発明イの技術的範囲に属する塗料の製造に特化した製造装置を発注し、納品された当該製造装置を日本国内の丙の工場内に設置して、取引業者らに対し、それらの事実を伝え、発注があれば直ちに日本国内で当該塗料の製造を開始することを説明した。

(1) 丙は、特許権Pに係る特許出願の日後、上記製造装置を使用して、発明イの技術的範囲に属する塗料cを製造し、その販売を行っていた。

 甲は、丙による塗料cの製造販売が特許権Pの侵害であることを理由に、丙に対し、損害賠償請求訴訟を提起した。

 この場合、丙は、特許法上、どのような主張をすることができるか、説明せよ。

(2) 丙は、塗料cから塗料dに切り替えて製造販売を行っている。塗料dは、調達の関係から、塗料cに含まれる顔料(着色剤)を、塗料の耐水性には影響のない別の顔料に変更したものであり、発明イの技術的範囲に属するものである。

 甲は、丙による塗料dの製造販売が特許権Pの侵害であることを理由に、丙に対し、損害賠償請求訴訟を提起した。

 この場合、丙は、特許法上、どのような主張をすることができるか、説明せよ。

 ただし、上記(1)と重複する内容の主張を説明する必要はない。

 

→この設問については、「(1)も(2)も、丙は甲の特許権Pに係る特許発明イの技術的範囲に属する塗料cを(特許法70 条1項)、業としての実施である製造販売をしている(特許法2条3項1号)」であり、丙はいわゆる否認はできず、抗弁する手段の検討、という事かと存じます。

抗弁ですが、特許権P(発明イ)の無効理由探索・丙の先使用権を有しているか?(特許法79条)の検討かと存じます。

設問(1):先使用権(特許法79条)を有していることの主張、「事業の準備について」

・丙は、イと同一の発明を自ら完成させているので、知得経路は異なる(79 条)。

・「事業の準備」は、即時実施の意図を有し、かつ、その即時実施の意図が、客観的に認識される態様・程度において表明されているという意味である。丙は、甲の出願日よりも前に、発明イの技術的範囲に属する塗料に特化した製造装置を発注し、納品された当該製造装置を日本国内の丙の工場に設置して、取引業者らに対し、それらの事実を伝え、発注があれば直ちに日本国内で当該塗料の製造を開始することを説明しているので、丙は、甲の出願の際現に日本国内においてイの実施である「事業の準備」をしていることとなる。

以上より、丙は先使用権を有する。

設問(2):先使用権(特許法79条)を有していることの主張、「発明の範囲について」

設問(1)で挙げた要件以外で、「発明の範囲内」について説明していく。

・「発明の範囲内」は、出願の際に先使用権者が現に準備等をしていた形式だけでなく、これに具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式にも及ぶ。

本問では、cからdに切り替えて製造販売を行っているが、先使用権者丙が製造したdは、cに含まれる顔料を塗料の耐久性には影響のない別の顔料に変更したものであり、イの技術的範囲に属することから、発明イの同一性の範囲内であるといえる。

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