弁理士試験の論文試験内容について(1)

こんにちは、GODIVEです。
今回から4回かけて弁理士試験の論文試験内容についてUP予定です。
特許2回、商標1回、意匠1回(契約がかかるようなこともあったためです)。
以下で今年の論文試験問題等UPされております。
今年の論文試験の問題と論点についてUPされているURL(特許庁HP)
参考:https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-mondai/2025ronbun-hissu.html

どの科目もですが、契約がかかることが挙げられており、今回の投稿では、特許法1回目(問題Ⅰ)についてUP致します。
⇒に端的にコメント等記載させていただきます。
問題Ⅰ

参考:https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-mondai/document/2025ronbun-hissu/shiken_jitsuyou.pdf

【問題Ⅰ】
以下の設問に答えよ。
(中略)
1 出願人甲は、請求項1に「切削刃形状Xを有する切削工具」を記載し、請求項2に 「ベルトコンベアYを用いた切削屑の回収方法」を記載した実用新案登録請求の範囲 と、考案の名称及び考案の詳細な説明のみを記載した明細書と、考案の概要のみを記 載した要約書とを願書に添付して実用新案登録出願Aをした。請求項1及び請求項2 に係る考案における特別な技術的特徴は、それぞれ「切削刃形状X」及び「ベルトコ ンベアY」であった。 特許庁長官は、出願Aについて、実用新案に関する法令に規定する要件を満たして いないという理由により、補正をすべきことを命じた。 この場合、出願Aには、実用新案に関する法令上、どのような要件違反があったと 考えられるか、説明せよ。 なお、解答では、請求項1及び請求項2に係る考案をそれぞれ「考案イ」及び「考案ロ」と表記してよい。               【45点】

 

⇒以下の要件違反があったと考えられる。
1.請求項2に実用新案法での保護対象(実1条)ではない、方法の考案が記載されていること(実6条の2第1号)
  考案ロは方法の考案であり、物品の形状、構造又は組合せに係るものではない(実1条、実6条の2第1号)ためである。
2.考案の単一性違反(実6条の2第3号)
  技術的特徴が、「切削刃形状X(請求項1)」及び「ベルトコンベアY(請求項2)」とで、同一及び対応する技術的特徴でないためである(実6条)。
3.願書に添付が必須の図面等が添付されていないこと(実6条の2第4号)
  物品の形状、構造又は組合せに係る考案の説明のために、図面等の説明が要求されているところ(実5条2項、同条3項2号)、
  図面を提出しておらず、明細書に図面の簡単な説明を記載していないためである。
⇒参考情報ですが、
 j-platpatにて、この記事250706時点で、以下条件で検索してみたところ、2085件ヒット致しました。
  <条件>
  ・「実用新案及び実用新案明細書」×「登録日が今年2025年1月1日以降」
 少なくとも実用新案が使われていることは言えるかとは存じます。
 特許庁でも出願等統計情報の速報(直近だと令和7年4月分)がUPされております。
参考:https://www.jpo.go.jp/resources/statistics/syutugan_toukei_sokuho/index.html
 

2 パリ条約の同盟国Xの国民であり日本国に居所を有する甲は、特許請求の範囲及び 明細書に発明イを記載した特許出願Aを日本国特許庁にした。その後、甲は、請求の 範囲に発明イを記載し、明細書に発明イ、ロ、ハを記載した特許出願Bを、X国の特 許庁に適式にした。その後、出願Aについて特許査定がなされ、特許権Pの設定の登 録がなされた。その後であって出願Aの出願日から1年以内に、甲は、特許請求の範 囲及び明細書に発明イ、ロ、ハを記載した特許出願Cを日本国特許庁にした。以上を 前提に、以下の各設問に解答せよ。 ただし、各設問はそれぞれ独立しているものとする。 (1) 出願Cは、出願Aに基づく優先権の主張を伴うものであった。この場合、出願Cにお ける出願Aに基づく優先権の主張の手続は、どのように扱われるか。 (2) 出願Cは、出願Bに基づく優先権の主張を伴うものであった。甲は、出願Cの特許請 求の範囲を発明ロと補正すると同時に、出願Cの一部を分割して新たな特許出願Dを した。その特許請求の範囲には発明ハが記載されていた。この場合、甲は、出願Dに 係る発明ハに関して、出願Bに基づく優先権の主張の利益を享受することができるか。 パリ条約の規定に言及しつつ解答せよ。 (3) 甲と乙は、特許権Pを甲から乙に譲渡する契約を締結したので、特許権の移転に関す る手続を行いたいと考えた。この場合、乙は、単独で特許権Pの移転に関する申請を 行うことができるか。手続に必要な様式を参照しつつ解答せよ。             【55点】

 

⇒各設問、それぞれ独立しておりますが、特に(3)は特に独立されているかと思います。
⇒(1)について
 この優先権は、日本出願Aに基づく日本出願Cであり、国内優先権(41 条1項柱書)である。
 しかし、出願Bのあとで出願Cの前に、出願Aが特許査定確定しているため、41 条1項4号の要件を満たさない。
 よって、要件を満たさないため、出願Cにおける出願Aに基づく優先権の主張の手続は、不適法な手続であって、その補正をすることができないものであるため、
特許庁長官は、当該優先権の主張の手続を却下する(特 18 条の2第1項)、と扱われる。。
⇒(2)について
 結論:
  甲は、出願Dに係る発明ハに関して、出願Bに基づく優先権の主張の利益を享受することができる
 理由;
 ①日本出願Cは、パリ条約同盟国のX国にした出願Bに基づく優先権主張を伴っているため、出願Cに係る優先権は、パリ条約に基づく優先権である(パリ4条)。
 ②Bより先にされた出願Aの明細書等に、ロ及びハは含まれていない。よって、パリ条約同盟国のX国に住所を有する甲は、その同盟国のX国に、ロ及びハについて正規かつ最先の特許出願Bをしている(パリ2条、4条A⑴、C⑵)。よって、出願Bはハリ優先権の発生要件を満たす。
 ③Bの出願人甲が、他の同盟国の日本国に、Bの明細書に記載された同一の発明ロ、ハについて、Bより 12 月以内に特許出願Cを行っている(パリ2条、4条A⑴、C⑴、H)。
  また、適式な手続を行っている(同条D、特 43 条)。よって、出願Cはパリ優先権の主張要件を満たす。
 ④①から③より、パリ4条Bの規定の効果により、出願CはX国のBの日に我が国へされたものとして扱われる。
 ⑤ここで、出願D(出願Cを原出願にした分割出願)は、発明イ、ロ、ハを包含する出願Cの特許請求の範囲をロに補正すると同時に、Cからハに係る特許出願Dの分割を行っているため、適法な分割出願である(特44条1項)。
 ⑥⑤より、出願Dは自己の発意による適法な分割出願で、出願Bの明細書にロ及びハが記載されているため、当該利益を享受できる(パリ4条G⑵・H)。
⇒(3)について
 特に、(1)と(2)とは別の題目です。
 原則として、Pの移転登録の申請は、登録義務者甲及び登録権利者乙、共同で行う必要がある(特登令 18 条)。
しかし、乙は、単独で、以下手続等により特許権Pの移転に関する申請可である(特登令 19 条、特登施規 10 条の4第1号)。
 ・申請書に甲の承諾書を添附した場合、又は、申請書に添付する登録の原因を証明する書面(特登令29 条1項1号)として、特許権の移転を証明する契約書の謄本等であって認証のあるもの若しくは所定の様式によって作成された譲渡証明書等を添付する手続等(特登令 19 条、特登施規 10 条の4第1号イ・ロ、特登施規様式 7備考 16)。

今回は以上です。

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