弁理士試験の論文試験内容について(2)

こんにちは、GODIVEです。
今回は、前回からの続きで、弁理士試験論文試験内容(特許2回目)です。
今年の論文試験の問題と論点についてUPされているURL(特許庁HP)
参考:https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-mondai/2025ronbun-hissu.html
⇒に端的にコメント等記載させていただきます。

問題Ⅱ
参考:https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-mondai/document/2025ronbun-hissu/shiken_jitsuyou.pdf

【問題Ⅱ】
1 甲は、特許権Pの特許権者である。甲は、特許権Pにつき、特許請求の範囲全部について、乙に専用実施権を設定した。
 特許権P及び乙の専用実施権は有効に存続しているものとする。
 丙は、特許権Pには、特許法第 123 条第1項第2号に定める同法第 29 条第2項の無効理由が存するとして、甲に対し、特許庁に、特許権Pに係る発明の特許についての無効審判を請求した。
 以上を前提に、以下の各設問に答えよ。
 また、本問題文に示されていない事実をあえて仮定して論じる必要はない。
(1)  丙の請求した無効審判の手続に乙は関与することができるか、特許法上の根拠条文を挙げて説明せよ。

<コメント>

⇒乙は以下のように関与することができる。
 1.甲又は丙を補助するための参加(特148条3項)
  専用実施権者である乙は、審判の結果(特許無効かどうかの結果)により、以下のように利害関係を有するための参加ができる。
  ①甲(特許権者側)での参加とすると、特許権Pにより、排他権などを有することを継続できる(特77条2項、68条、2条3項各号)、
  ②丙(請求人)での参加とすると、特許権Pの無効による消滅により、甲に専用実施権に係る実施料などを支払うことなくなど特許権Pの影響なく、特許権Pに係る発明をできる。
 2.丙と同じように請求人として参加(特148条1項)
  上述の1②で挙げたように、乙は、特許権P無効よりに特許権Pの影響なく特許権Pに係る発明をできるという利害関係を有るため(特許法123条2項)、この参加ができる。
⇒補足:
 おそらく実務では、専用実施権であれば契約等があり、乙(専用実施権者)は甲側(特許権者側)に立つケースが主かと思われますが、 実際理屈としては、(2)もあるため挙げております。

(2)  乙は、無効審判請求における無効理由に対する甲の反論の主張について、適切かつ十分な反論となっているか、その実効性に疑問を持ち、当該無効審判請求の手続において 甲の主張とは異なる主張をすることを考えている。乙によるその主張は可能か。理由とともに説明せよ。                         【25点】

<コメント>

1.結論
  甲と異なる主張をすることができる(特148 条4項)。
2.理由
  設問1で挙げたように、乙は甲の補助参加人として参加ができる(特148条3項)。
  審決の効力が及ぶため、乙は、補助参加人として一切の審判手続ができるためである(特148 条4項)。
⇒補足:
 青本(工業所有権逐条解説、特許)の523/932の箇所参照です。
参考:https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/kogyoshoyu/chikujokaisetsu22.html

 

2  甲は、「構成Aを備える装置α」(以下、装置α)の製造販売を行っていたところ、装置αに構成Bを付加することにより、試料中の物質Xの検出に使用できることを知見し、「構成Aと構成Bとを備える物質Xの検出装置β」(以下、装置β)の発明イを完成させた。その後、甲は、発明イについて、特許出願を行った。
 発明イについての特許出願後、甲は、開発品である装置βの商用化に向けた試験を行うために、乙と共同研究契約を結んだ。当該共同研究契約は、所定の期日までに装置βを物質Xの検出に使用できることを実証することを目的とし、装置βの一般販売開始まで装置βに関する秘密保持義務を乙に課すとともに、実証実験で得られたデータについては甲及び乙の間で、共同研究契約期間終了後も秘密保持義務が課されているものの、得られたデータの使用については特段の定めがなかった。
 甲は、上記共同研究契約期間終了後、装置βの試作品の貸渡しを開始したが、現時点において、一般販売には至っていない。
 一方、乙は、上記共同研究契約期間終了後に、前記実証実験で得られたデータを解析したところ、装置βを用いて得られたデータに処理Cを行うことにより、試料中の物質Xの存在から従来は予測し得なかった特性Yの評価ができることを思いがけず知見し、実際に、物質Xを含む試料について装置βを用いて得られたデータに処理Cを行うことにより特性Yを評価して、「構成Aと構成Bとを備える物質Xの検出装置βを用いて得られたデータに処理Cを行う特性Yの評価方法γ」(以下、方法γ)の発明ロを完成させた。乙は、発明ロについて特許出願を行い、その後、特許権Pの設定登録がされ、現時点において、特許権Pは存続している。
 以上を前提に、以下の設問に答えよ。ただし、設問(1)、設問(2)はそれぞれ独立しているものとする。  【75点】
 (1)  甲は、装置βの試作品の貸渡しを行っていたところ、特許権Pの存在を知った。甲は特許権Pに係る発明ロが、一般販売されていない装置βを構成として含むため、甲自身も発明ロの発明者の一人であり、特許法第74条第1項の規定に基づく特許権Pの持分の移転を請求したいと考え、弁理士に相談した。弁理士は、当該請求は認められないだろうと回答した。当該請求が認められない理由 を、特許法上の観点から具体的に説明せよ。

 

<コメント>

⇒甲は共同発明者でなく、特許を受ける権利を有しないため、特許法74 条1項の要件を満たさず、移転請求は認められないためである。以下具体的に説明する。
 1.甲が共同発明者ではないことについて(特許法29条1項柱書など)
  共同発明とは、2以上の自然人の実質的な協力により完成された発明をいう。
 実質的な協力とは、新規着想と発明の具体化における一体的連続的を有する関係いう。
  甲は、発明ロについて、特に発明ロの構成(装置βを用いて得られたデータに処理Cを行うこと)についての 新規着想及びこの着想の具体化を行っていない。
 この構成については、当該契約に関しての定めもなく、甲が装置βを貸渡しすることで公然実施によって、乙が、新規着想等により生まれたものである。
 この生まれたことは、甲と乙との一体的連続的関係もなく生まれたものである、
  よって、甲は当該共同発明者ではない。
⇒補足等説明
 発明者の認定はどうしても、現場となるのですが、実務では契約終了後の取扱いなども
 設定していくことが一定数あります。

(2)  丙は、物質Xを含有する商品Zを製造販売する業者である。
特許権Pの設定登録後、丙は、装置βの試作品を知り、その試作品を用いれば特性Yの評価に使用できるのではないかと考え、甲からその試作品を借り受け、特性Yの評価に使用し、合格した商品Zを販売している。
この場合、次の問いに答えよ。ただし、抗弁事由については検討しなくてもよい。
(a) 乙の丙に対する特許権Pに基づく差止請求は、どのような場合に認められるか、請求の対象となる行為と併せて、特許法上の根拠条文を挙げて説明せよ。なお、丙は、特許権Pについての実施権の許諾を受けていないものとする。

<コメント>

⇒差止請求の前提となる特許権侵害とは、正当な権原等なき第三者が業として特許発明の実施をすること又は一定の予備的行為をいう(68 条、100 条、101 条等)。
以下どのような場合かを説明する。
 1.丙が、特性Yの評価の使用する行為
  丙は、甲からβの試作品を借り受け、装置βを用いて得られるデータに処理Cを行うことにより、特性Yの評価を行っている場合には、特許発明ロの技術的範囲に属する実施となり(70 条1項)、丙の行為は、乙のPの侵害を構成する(68 条)。
 2.商品Zの販売の場合はないと考える、以下理由による。
  方法の発明(特2条3項2号)と物を生産する方法の発明(特2条3項3号)とは、明文上判然と区別され、与えられる特許権の効力も明確に異なっている。
 よって、特許権Pに係る発明(方法γ)は、方法の発明(特2条3項2号)であり、この販売行為の場合はないと考える。
⇒補足等
 いわゆる単純方法の発明と製造方法の発明の区別ですが、以下法律事務所で事例等が挙げられているので、ご参考までであります。
参考:
https://www.nakapat.gr.jp/ja/legal_updates_jp/%e3%80%90%e7%99%ba%e6%98%8e%e3%81%ae%e3%82%ab%e3%83%86%e3%82%b4%e3%83%aa%e3%83%bc%e2%91%a0%e3%80%91%e3%80%8c%e5%8d%98%e7%b4%94%e6%96%b9%e6%b3%95%e3%81%ae%e7%99%ba%e6%98%8e%e3%80%8d%e3%81%ae%e6%a8%a9/

(b) (a)の差止請求が認められるとき、乙は甲に対し、どのような場合に特許権Pに基づく差止請求をすることができるか、特許法上の根拠条文を挙げて説明せよ。

<コメント>

⇒1.検討
 題意より、丙は、甲からβの試作品を借り受け、装置βを用いて得られるデータに処理Cを行うことにより、特性Yの評価を行っている、という場合で説明する。
 甲が、装置βの試作品について貸渡しをしても特許発明ロの一部実施であり、権利一体の原則から(70 条1項)、Pの直接侵害(68 条)を構成しない。
 よって、本題では、以下場合で、差止請求することができる。
 2.間接侵害(特101)を構成する場合
 (1)101 条4号
  「のみ」とは、経済的、商業的又は実用的な他の用途がないことである。
  本問では、「装置βの試作品の貸渡しを開始したが、現時点において、一般販売には至っていない。」ということで、装置βが丙以外で試作品の貸渡しを行っているか
 明らかではなく、βは、評価方法γに「のみ」用いる物であるかは明らかではない、
  よって、装置βが発明ロの実施にのみ用いられる物に該当する場合に、この101 条4号におけるPの侵害とみなされる。
 (2)101 条5号
  仮に、(1)で挙げる「のみ」に該当しない場合でも、βが評価方法γに用いられる物であり、発明ロによる課題の解決に不可欠なものにつき、
 甲が、ロが特許発明であること及びβがロの実施に用いられることを知りながら貸渡しをし、βが日本国内において広く一般に流通していないものである場合である。
 この場合、この101 条5号におけるPの侵害とみなされる。

今回は以上です。
次回は、弁理士試験論文(商標)を行う予定です。

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