こんにちは、GODIVEです。大変投稿が遅くなり失礼致します。
今回は、前回からの続きで、弁理士試験論文試験内容(意匠問題Ⅰ)です。
今年の論文試験の問題と論点についてUPされているURL(特許庁HP)
参考:https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-mondai/2025ronbun-hissu.html
⇒に端的にコメント等記載させていただきます。
特許等の事案でも挙がる「並行輸入」が挙がっているので紹介させていただきます。
問題I
参考:https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-mondai/document/2025ronbun-hissu/shiken_isyou.pdf
【問題Ⅰ】
パリ条約の同盟国X国の国民である甲は、新規なドローンの意匠イを創作し、令和6年
(2024 年)7月 10 日、当該ドローンをX国の展示会に出品し、初めて公開した。当該展
示会の後、X国の国民である乙は、甲の依頼を受けて、ドローン専用の外付け小型カメラ
の意匠ロを創作し、X国で製造した当該小型カメラを全て甲に引き渡している。甲は、当
該ドローン及び当該外付け小型カメラを組み合わせた小型カメラ付ドローンの意匠ハを
創作した。小型カメラ付ドローンの意匠ハはドローンの意匠イと類似しており、また、意
匠ハの小型カメラ部分には意匠ロがそっくりそのまま現されている。
令和7年(2025 年)1月1日、甲は、インターネット上のウェブサイトを通じて当該小
型カメラ付ドローンの販売を開始した。
また、令和7年(2025 年)1月 15 日、甲は、X国の特許庁に意匠イについて意匠登録
出願をしたところ、意匠登録され、令和7年(2025 年)2月 28 日にX国の意匠公報に掲
載された。
このような状況の下、甲は、日本国において、意匠イ及び意匠ハについて意匠登録を受
けたいと考えている。令和7年(2025 年)6月 29 日に甲から相談を受けた弁理士の立場
で、次の設問に答えよ。
なお、各設問は独立したものである。また、解答に際して、ジュネーブ改正協定に基づ
く特例について考慮する必要はない。各意匠について意匠登録を受ける権利は、創作と同
時に創作者から出願人に適法に承継されており、出願人の名義変更に関する手続について
言及する必要はない。各出願に係る意匠は、物品の部分に関するものではない。各意匠権
は有効に存続しているものとする。問題に示されていない事実をあえて仮定して論じる必
要はない。
(1) 意匠イについて意匠登録を受けるため、甲が出願する際に、公知の意匠との関係で生
じる拒絶理由を回避するために留意すべき点について説明せよ。
⇒公知の意匠
①意匠イ:2024年7月10日に日本国出願前のX国展示会発表により公知(3条1項1号、17 条1号)
②意匠イに類似する意匠ハ:2025年1月1日に、甲は、インターネット上のウェブサイトを通じて当該小
型カメラ付ドローンの販売
③意匠イ:2025年2月28日にX国の意匠公報に掲載
⇒2025年1月15日:X国の特許庁に意匠イについて意匠登録出願
⇒対応
新規性喪失例外の適用(4条):①の行為の適用 展示会発表から1年。
パリ優先権主張(パリ4条Bなど):③による拒絶理由を回避、②を基礎にしてのパリ優先権主張。
(2) 意匠イについて意匠登録を受けた後、さらに意匠ハについて意匠登録を受けるため、
甲が出願する際に、公知の意匠との関係で生じる拒絶理由及び意匠イの出願との関係で
生じる拒絶理由を回避するために留意すべき点について説明せよ。
⇒②の行為による拒絶理由回避のため、意匠イに係る出願を利用して、関連意匠制度活用(10条)。
X国におけるイに係る出願の日から 10 年以内に、イを本意匠とし、類似意匠ハについて出願することに留意(10条1項かっこ書き)。
意匠法10条1項かっこ書
関連意匠の意匠登録出願の日:パリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日。
(3) 令和6年(2024年)8月1日、乙は、意匠ロについて、日本国特許庁に意匠登録出願
を行い、意匠登録を受けた。他方、甲は、乙の当該出願の日後、意匠ハについて、日本
国特許庁に意匠登録出願を行い、意匠登録を受けた。そこで甲は、日本の販売代理店で
ある丙に意匠ハに係る意匠権について通常実施権を許諾した。
丙は、甲がX国で販売している意匠ハに係る小型カメラ付ドローンを甲から購入し、
日本国内において販売することを計画している。丙は当該小型カメラ付ドローンを輸
入・販売することができるか、乙の意匠ロに係る意匠権の侵害の成否について触れた上
で、説明せよ。
⇒いわゆる並行輸入に係る事案です。
丙は、ハに係る甲の意匠権の通常実施権者であるため、実施の権原を有する(23 条、28 条1項)。
小型カメラ付ドローンの意匠ハは、意匠ハの小型カメラ部分には意匠ロがそっくりそのまま現されているので、
意匠ロは意匠はを利用している。
当該利用から、先願優位の原則により、意匠ロに係る意匠権(乙の意匠権)により、丙は意匠ハを実施できないように思える(26条1項)。
しかし、X国の国民である乙は、甲の依頼を受けて、ドローン専用の外付け小型カメラの意匠ロを創作し、X国で製造した当該小型カメラを全て甲に引き渡している。
この全ての引き渡しは、意匠ロについて、販売先及び使用地域から日本を除外する旨の合意がないと考えられる。
国際的な商品の流通という現在を踏まえ、この全ての引き渡しのより、乙は、甲及び甲の転得者(丙)において、日本で、意匠ロに係る権利を黙示的に授与したものと考えられる。
よって、丙は、ハに係るドローンを輸入・販売することができる。
⇒並行輸入については、特許庁のホームページ(以下URL)で端的にまとめられて紹介されております(更新日:2024年2月14日)
参考:https://www.jpo.go.jp/support/ipr/qanda/q03.html
次回は今年の弁理士論文試験意匠法問題Ⅱ共同契約関連などを触れる予定です。
