特許法104条の推定の事例

こんにちは、GODIVEです。投稿遅くなり失礼致します。
今回は、特許法104条の推定の事例をUP致します。

(生産方法の推定)
第百四条 物を生産する方法の発明について特許がされている場合において、その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でないときは、その物と同一の物は、その方法により生産したものと推定する。
趣旨:工業所有権逐条解説より
 本条は、特許が方法の発明についてされている場合にその方法の発明の侵害を防止するため、一定の条件の下に立証責任の転換をする旨を規定したものである。
特許権侵害訴訟においては、他の場合と同様、その侵害の事実があったことの立証は別段の規定がない限り原告がしなければならないことは言うまでもない。
 しかし、方法の発明について特許がされている場合に、ある行為がその方法を侵害してされたものであるということの事実を立証するのは容易なことではない。
 例えば物質Aと物質Bとを高温度で化合せしめ一定時間の後、急速に冷却して物質Pを製造する方法に特許がされている場合に、結果物である物質Pそのものを比べてもそれが前記の特許に係る方法によって製造されたものかどうかは容易に判断し難く、それを製造した工場を比べても高温度で化合した事実や急速に冷却した事実などはその痕跡をとどめないのが常である。
 このような実情に鑑み、その特許になっている方法によって生産される物が特許出願前に日本国内において公然知られていない物)すなわち、新規な物(であるときは、その物と同一の物はその方法によって生産されたものと推定しようというものである。物が公然知られていない場合に限られるので、その物についても特許される可能性がある場合が少なくなく、しかも物自体について特許を受けていれば前述したような立証の困難ということは生じない。
出典:特許庁総務部総務課制度審議室編 『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕 一般社団法人発明推進協会

 以下のパテント誌(3.1)でも挙げられているように、昭和50年の特許法改正により化学物質の発明が特許を受けることができるようになったことにより、物の生産方法の特許発明の権利行使をしなければならない場面が少なくなったと考えられております。
 直近で、この104条の推定が活用された裁判例で、エクオール事件があります。

エクオール事件
参考:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-90953.pdf
令和4年2月9日判決言渡
令和2年(ネ)第10059号 特許権侵害差止請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成30年(ワ)第18555号)
⇒本控訴審判決(令和2年(ネ)第10059号)、抜粋
・「本件特許の特許出願日」が(被告方法との関係でも)優先日まで遡れると判断された。⇒優先日と親出願日との間の公知物は考慮されないから、特許法104条が適用。
・「基礎出願A,Bの上記記載に接した当業者は,上記本件優先日当時の技術常識とを考え併せ,「大豆胚軸」以外の「ダイゼイン類を含む原料」を発酵原料とした場合でも,ラクトコッカス20-92株のようなエクオール及びオルニチンの産生能力を有する微によって,発酵原料中の「ダイゼイン類」がアルギニンと共に代謝されるようにすることにより,発酵物の乾燥重量1g当たり,8mg以上のオルニチン及び1mg以上のエクオールを含有する,食品素材として用いられる粉末状の発酵物を生成することが可能であると認識することができたというべきであるから,本件訂正発明を基礎出願A,Bから読み取ることができるものと認められる。したがって,本件訂正発明は,少なくとも基礎出願A,Bに記載されていたか,記載されていたに等しい発明であると認められ,本件訂正発明は,基礎出願A,Bに基づく優先権主張の効果を享受できるというべきである。
 そうすると,本件特許は,特許法104条の規定の適用については,本件優先日~に出願されたものとみなされるから,本件訂正発明生産物が同条の特許出願前に日本国内において「公然知られた物でない」か否かを検討するに当たり,本件優先日以降に公開された乙B3~を考慮することはできない。~本件訂正発明生産物は,本件優先日当時,「公然知られた物でない」といえる。…被控訴人原料の生産に本件訂正発明の方法を使用していないことが立証されているとはいえないから,特許法104条の推定が覆滅されたと認めることはできない。」
⇒被控訴人らは、控訴人が提出の実験証明書(甲60)などの反論なども活用して、被控訴人方法は本件訂正発明の方法と異なるから、被控訴人原料は本件訂正発明の方法を使用して生産されたとはいえないと主張しておりました。
しかし、被控訴人らの提出証拠等を踏まえても、被控訴人原料の生産に本件訂正発明の方法を使用していないことが立証されているとはいえないから特許法104条の推定が覆滅されたと認めることはできないとされました、

 このエクオール事件の解説も含めて、例えば以下文献などが詳細に記載されておりますので、ご参考までにご覧いただけば幸いです。
・パテント誌
参考:https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4132
・知財管理
参考:日本知的財産協会会誌広報委員会 編 知財管理 2023年3月号
・中村合同特許法律事務所のHP
参考:
https://www.nakapat.gr.jp/ja/legal_updates_jp/%E4%BB%A4%E5%92%8C2%E5%B9%B4%E3%83%8D10059%E3%80%90%E3%82%A8%E3%82%AF%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%90%AB%E6%9C%89%E6%8A%BD%E5%87%BA%E7%89%A9%E5%8F%8A%E3%81%B3%E3%81%9D%E3%81%AE%E8%A3%BD%E9%80%A0/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

コメント

お名前 *

ウェブサイトURL

CAPTCHA