新規性について

こんにちは、GODIVEです。投稿遅くなり失礼致します。
今回は新規性について、UPさせていただきます。

【ケース1】
 また弁理士論文試験の題材(平成26年)を使いますが、以下のケースです。
<問題Ⅰ>
 日本国に住所を有する甲は、甘味料の発明イ及びロをし、平成 23 年 12 月1日に、展示会において、発明イの技術的範囲に属する甘味料α(以下「α」という。)を無条件に入場者にサンプル配布した(以下「配布」という。)。αは、外観からも、また、試食したとしても、発明イの技術的範囲に属するかを判別可能なものでなく、さらに、甲は、αの内容に関する情報を一切開示しなかった
(中略)
 一方、展示会に入場した乙は、配布されたαを持ち帰り、平成 23年12月9日に、半年前に購入した市販の分析器によりαを分析したところ、その分析結果は、αが発明イの技術的範囲に属することを判断できるものであった。
以上の事例を前提として、以下の設問に答えよ。なお、本事例においてはいかなる補正もなされないものとする。
(2) 上記配布により、発明イの新規性が喪失するかを、新規性が特許要件とされている趣旨に触れつつ、理由とともに述べよ。

コメント:
このケースだと、配布されたαを持ち帰れてαの市販の分析器で中身を分析できαが発明イの技術的範囲に属することを判断できた、というケースです。
そうなると、少なくとも、不特定の第三者(乙)が市販の分析器を用いさえすれば発明イを知れる状況(公然知られるおそれのある状況)となります。
よって、少なくとも発明イは、特許法29条1項2号の「公然実施をされた発明」となり、発明イの新規性が喪失する、ということになります。

【その他】
 上述のケース1を⇒のように変えて、例えば以下のケースだと、公然知られるおそれのある状況に至らなく、発明イの新規性が喪失しない、ということにもなります。
・無条件に入場者にサンプル配布
 ⇒サンプル配布しない
・市販の分析器によりαを分析し・・・・
 ⇒実際は発明イを解析することが不可能
  具体的は想定しにくいところですが、例えば測定限界以下の微量な物質を含有させている点が発明の内容(発明イの内容)であったり、
  人の手の届かない海底や宇宙空間などに設置された後に実施物が譲り渡されているような場合
 (青林書院、特許・実用新案の法律相談、新規性より)
 新規性があるなし、というのは、色々Factを整理して正確に要求されるケースが知財の仕事では多くあります。ご参考にしていただければ幸いです。

新規性の審査基準(抜粋)については以下の通りです。

【参考:新規性、特許審査基準】

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/all.pdf

pdfのp221~226
3.1.3 公然知られた発明(第 29 条第 1 項第 1 号)
「公然知られた発明」とは、不特定の者に秘密でないものとしてその内容が知られた発明をいう(注)。
(注) 守秘義務を負う者から秘密でないものとして他の者に知られた発明は、「公然知られた発明」である。このことと、発明者又は出願人の秘密にする意思の有無とは関係しない。
学会誌等の原稿は、一般に、その原稿が受け付けられても不特定の者に知られる状態に置かれるものではない。したがって、その原稿の内容が公表されるまでは、その原稿に記載された発明は、「公然知られた発明」とはならない。「公然知られた発明」は、通常、講演、説明会等を介して知られたものであることが多い。その場合は、審査官は、講演、説明会等において説明された事
実から発明を認定する。
3.1.4 公然実施をされた発明(第 29 条第 1 項第 2 号)
「公然実施をされた発明」とは、その内容が公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況で実施をされた発明をいう(注)。
(注) その発明が実施をされたことにより、公然知られた事実もある場合は、第29条第1項第1号の「公然知られた発明」にも該当する。
「公然実施をされた発明」は、通常、機械、装置、システム等を用いて実施されたものであることが多い。その場合は、審査官は、用いられた機械、装置、システム等がどのような動作、処理等をしたのかという事実から発明を認定する。
その事実の解釈に当たって、審査官は、発明が実施された時における技術常識を参酌することにより当業者が導き出せる事項も、「公然実施をされた発明」の認定の基礎とすることができる。
3.1.1. 頒布された刊行物に記載された発明(第 29 条第 1 項第 3 号)
「頒布された刊行物に記載された発明」とは、不特定の者が見得る状態に置かれた(注1)刊行物(注2)に記載された発明をいう。
(注1) 現実に誰かが見たという事実を必要としない。
(注2) 「刊行物」とは、公衆に対し、頒布により公開することを目的として複製された文書、図面その他これに類する情報伝達媒体をいう。
(1) 刊行物に記載された発明
a 「刊行物に記載された発明」とは、刊行物に記載されている事項及び刊行物に記載されているに等しい事項から把握される発明をいう。審査官は、これらの事項から把握される発明を、刊行物に記載された発明として認定する。刊行物に記載されているに等しい事項とは、刊行物に記載されている事項から本願の出願時における技術常識を参酌することにより当業者が導き出せる事項をいう。審査官は、刊行物に記載されている事項及び記載されているに等しい事項から当業者が把握することができない発明を「引用発明」とすることができない。そのような発明は、「刊行物に記載された発明」とはいえないからである。

次回7月中盤は、また別のテーマをUP致します。

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