こんにちは、GODIVEです。投稿遅くなり失礼致します。
今回は、試験又は研究のためにする特許発明の実施(特許法69条1項)、医薬品医療機器等法上の承認申請のためにする特許発明の実施、について、UPさせていただきます。
今年の弁理士試験の論文試験の問題を用いて挙げさせていただきます。
【今年の弁理士論文試験、特許問題Ⅱ】
製薬会社甲は、特許請求の範囲に記載された請求項の数が1のみであって、
当該請求項1における記載が「製法Xによって生産される化合物αを有効成分として含有する、口腔内崩壊型の錠剤。」である、発明イに係る特許権Pの特許権者である。
特許権Pは、平成23年9月1日に特許権の設定登録がなされ、令和5年7月2日時点も存続しており、令和6年2月1日に特許出願の日から20年となる。
甲は、医薬品医療機器等法上の所定の承認を得た上で、発明イの実施品である錠剤Aを製造し、販売している。
(中略)
設問1:甲は、単独で特許権Pを有している。以下の乙の行為1、行為2及び行為3が特許権Pの侵害を構成するか否か、行為ごとに説明せよ。
製薬会社甲は、特許請求の範囲に記載された請求項の数が1のみであって、
当該請求項1における記載が「製法Xによって生産される化合物αを有効成分として含有する、口腔内崩壊型の錠剤。」である、発明イに係る特許権Pの特許権者である。
特許権Pは、平成23年9月1日に特許権の設定登録がなされ、令和5年7月2日時点も存続しており、令和6年2月1日に特許出願の日から20年となる。
甲は、医薬品医療機器等法上の所定の承認を得た上で、発明イの実施品である錠剤Aを製造し、販売している。
(中略)
設問1:甲は、単独で特許権Pを有している。以下の乙の行為1、行為2及び行為3が特許権Pの侵害を構成するか否か、行為ごとに説明せよ。
行為1: 製薬会社乙は、甲に無断で、平成27年6月1日から同年8月31日まで、自社の研究所内で発明イの技術的範囲に属する錠剤Bを生産し、発明イの技術的効果を確認・評価するための実験にのみに使用していた。
行為2:乙は、甲に無断で、令和元年6月1日から令和2年12月25日までに、錠剤Bを製造販売する上で医薬品医療機器等法所定の承認申請を行う際に必要な資料を得るために、錠剤Bを生産し、必要な試験を行った。
行為3:行為2の後、錠剤Bの製造販売に係る医薬品医療機器等法上所定の承認を得られることを見込んで、乙は、特許権Pの存続期間満了後ただちに錠剤Bを販売するべく、甲に無断で、令和5年6年1日から、錠剤Bの製造を開始した。
行為2:乙は、甲に無断で、令和元年6月1日から令和2年12月25日までに、錠剤Bを製造販売する上で医薬品医療機器等法所定の承認申請を行う際に必要な資料を得るために、錠剤Bを生産し、必要な試験を行った。
行為3:行為2の後、錠剤Bの製造販売に係る医薬品医療機器等法上所定の承認を得られることを見込んで、乙は、特許権Pの存続期間満了後ただちに錠剤Bを販売するべく、甲に無断で、令和5年6年1日から、錠剤Bの製造を開始した。
⇒コメント
「特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない」(特許法第69条1項)の範囲について、の問いです。
この「試験又は研究」は以下の範囲とされております(吉藤先生、特許法概説、以下の東大HPでもわかりやすく解説されております)。
「特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない」(特許法第69条1項)の範囲について、の問いです。
この「試験又は研究」は以下の範囲とされております(吉藤先生、特許法概説、以下の東大HPでもわかりやすく解説されております)。
・特許性調査:新規性・技術的進歩性の有無の調査
・機能調査:特許発明が実施可能であるか、明細書記載どおりの効果を有するか等の調査
・改良・発展を目的とする試験:特許発明それ自体を対象とし、かかる特許発明の対象について、さらに改良を遂げ、より優れた発明を完成するための試験
・機能調査:特許発明が実施可能であるか、明細書記載どおりの効果を有するか等の調査
・改良・発展を目的とする試験:特許発明それ自体を対象とし、かかる特許発明の対象について、さらに改良を遂げ、より優れた発明を完成するための試験
行為1は、「発明イの技術的効果を確認・評価するための実験にのみ・・」ということなので、いわゆる機能調査と考えられ、特許法69条1項の試験又は研究のためにする特許発明の実施であり、特許権の効力は及ばない。及ばないため。特許権Pの侵害を構成しない、ということになります。
行為2は、いわゆる後発医薬品について薬事法14条所定の承認を申請するため必要な試験を行うことと特許法69条1項にいう「試験又は研究のためにする特許発明の実施」ということについてです。
乙の行為2も、69 条1項にいう「試験又は研究のためにする特許発明の実施」に当たると解すべきということです。
なぜならば、
・存続期間終了後は、何人も自由にその発明を利用でき、それによって社会一般が広く益されるようにすることが特許制度の根幹の一つであるところ、当該試験が 特許法69 条1項の「試験」に当たらないとすると、存続期間終了後も第三者である乙がイを自由に利用できないこととなり、特許制度の根幹に反するから。
・また、存続期間中は後発医薬品の製造承認申請に必要な試験のための生産等をも排除し得るものと解すると、特許権Pの存続期間を相当期間延長するのと同様の結果となるが、これは特許権者に付与すべき利益として特許法が想定するところを超えるから。
なぜならば、
・存続期間終了後は、何人も自由にその発明を利用でき、それによって社会一般が広く益されるようにすることが特許制度の根幹の一つであるところ、当該試験が 特許法69 条1項の「試験」に当たらないとすると、存続期間終了後も第三者である乙がイを自由に利用できないこととなり、特許制度の根幹に反するから。
・また、存続期間中は後発医薬品の製造承認申請に必要な試験のための生産等をも排除し得るものと解すると、特許権Pの存続期間を相当期間延長するのと同様の結果となるが、これは特許権者に付与すべき利益として特許法が想定するところを超えるから。
行為3については、特許権Pの存続期間満了後ただちにBを販売するために行っており、当該特許法69条1項の試験又は研究のためにする特許発明の実施に該当しない、すなわち特許性調査、機能調査、改良・発展を目的とする試験どれにも該当しない、となります。
よって、乙は、甲の発明イに係る特許権Pの存続期間内に、イの技術的範囲に属する(特許法70条1項)錠剤Bを、業として生産しているため(2条3項1号)、甲の特許権Pの侵害を構成することになります(特許法68条)。
次回のブログも今年の弁理士論文試験問題(特許)を用いて、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの特許権の効力が及ぶ範囲、についてUP予定です。