プロダクト・バイ・プロセス・クレームについて

こんにちは、GODIVEです。投稿遅くなり失礼致します。

今回は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームについて、UPさせていただきます。

前回に引き続き今年の弁理士試験の論文試験の問題を用いて挙げさせていただきます。

 

弁理士試験論文試験問題

参考:https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-mondai/document/2023ronbun-hissu/shiken_jitsuyou.pdf

【今年の弁理士論文試験、特許問題Ⅱ】

 甲と大学丙は特許権Pを共有している。

特許権Pの内容(クレーム内容):製法Xによって生産される化合物αを有効成分として含有する、口腔内崩壊型の錠剤A。

 製薬会社丁は、平成31年1月5日に、製法Xとは異なる製法であって、製法Xと比べて化合物αの収率(※)が10%向上した製法Yを完成させた。

 その後、丁は、甲及び丙に無断で、令和5年2月1日から、当該製法Yによって化合物αを生産し、当該化合物αを有効成分として含有する口腔内崩壊型の錠剤Cの製造販売を、医薬品医療機器等法上所定の承認を得た上で、行っている。

(中略)

 令和5年7月2日を基準にして回答せよ。

※収率:化学的手法によって原料物質から目的物質を取り出すとき、理論的に取り出せると仮定した量と実際に得られた量との割合のこと。

設問(1)

 丁に対して特許権Pに基づく錠剤Cの製造販売の停止を求めて訴訟を提起するとした場合、特許権Pの効力が錠剤Cに及ぶことについて、特許権者はどのような主張することが考えられるか理由とと共に説明せよ。

 なお、均等侵害について言及する必要はない。

 

⇒まさにプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈についてです。

 このケースだと、特許権者側としては、下記1の主張となるかと存じます。

 すなわち、製法Xにより製造された錠剤Aと比べて、錠剤Cが、構造・特性が同一であるとして、錠剤Xが特許権Pに係る発明の技術的範囲に属するという主張(特許法68条、70条)

↓参考判例:

平成24年(受)第1204号 特許権侵害差止請求事件

平成27年6月5日 第二小法廷判決

参考:https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/145/085145_hanrei.pdf

裁判要旨

参考:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85145

1 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定される。

2 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られる。

(1,2につき補足意見及び意見がある。)

 

全文の該当箇所から抜粋

PBPクレームについての特許法70条の解釈が問題とされることがある。これについては,物の発明(クレームの末尾が「物」で終わるもの)に係るクレーム中の製造方法は,当該製造方法に限定する趣旨ではなく,その製法によって作られる物自体を特定することを意味する記載ととらえるべきで,これもクレーム記載の文言を基準とする解釈そのものであると考える。つまり,物の発明においてあえて製造方法を記載することは,物自体についての発明として保護を求めているものと解し,そう解することをむしろ原則とすべきである。

次に,PBPクレームについては,例外として,特許発明の技術的範囲の確定が,特許無効の抗弁における発明の要旨認定と同様には考えられない場合も存在することを認めるべきである。なぜなら,裁判所が行う侵害訴訟におけるクレームの解釈は,既に成立した特許権の法的保護範囲を確定するために行うものである。これに対して,特許庁が行う審査・審判におけるクレームの解釈は,審査ではその出願された発明に特許を与えるかどうか,審判ではその成立した特許が本来特許されるべきものであったかどうかをそれぞれ判断するために行うものである。そのように両者における解釈の目的が異なるわけであるから,その結果,両者の解釈が相違する場合があっても,それはやむを得ないものと考えられるからである。その意味で,PBPクレームは,侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の認定と発明の要旨認定とが異なることがある例外の一つであると解すべきである。このように解すると,一部のPBPクレームについては,権利行使の局面で,発明の要旨認定と比べて特許発明の技術的範囲の認定が狭くなるという結果もあり得るわけであるが,それもまた出願人がこうしたPBPクレームを選択した結果であり,やむを得ないところであるといわざるを得ない。したがって,事案によっては現在もそうされているように,必要に応じ,出願経緯禁反言の法理や意識的除外の法理など従来から確立しているクレーム解釈の法理により,PBPクレームで表現された物の特許についての特許発明の技術的範囲を実質的にその製法に限定されるように解釈することで,妥当な結論が導かれることになるものと考える。

 

<上述とは少し観点が異なりますが、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの審査>

 当該裁判を受けて、2016年9月28日特許庁掲示(以下URL)のように審査となっております。

参考:https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/product_process/index.html

<その他>

 他のブログで、医薬系特許的判例ブログ(以下URL)もありますので、ご参考までにです。

参考:https://www.tokkyoteki.com/2023/07/r5-benrishi-examination.html

 

今回は以上です。

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