商標「ゆっくり茶番劇」について③

「ゆっくり茶番劇」にかかる商標登録について登録無効審判を請求するとした場合の無効理由について、4条1項10号、同15号または同19号に該当することを主張できないでしょうか?


結論から言えばこれらはいずれも難しいと思います。

まず10号ですが、これが本件で適用されるには、「ゆっくり茶番劇」の名称が「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するもの」として広く知られていることが必要です。
しかし、前述の通り、「ゆっくり茶番劇」という名称は、誰でもが使えるような一種のジャンル名として知られていたようで、特定の誰かの名称と認識されていたものではなかったようです。ですので「他人の業務にかかる」ものとは言い難いでしょう。

15号についても同様です。これが本件に適用されるためには、「ゆっくり茶番劇」の名称が「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ」があることが必要です。しかし、この名称は誰もが使えるものとして認識されていたようです。そのため、この名称を使ったことにより、特定の誰かと経済的な関係があることや、組織的な関係があると誤解されるということが、考えづらいということが言えます。

19号についてですが、これが適用されるためにはの「ゆっくり茶番劇」の表示が「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者 の間に広く認識されている」ことが必要で、さらに「不正の目的」(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的などが該当)があることも必要になります。
「不正の目的」とは、工業所有権審議会答申によれば、著名商標にフリーライドしたり、そのような商標を希釈化させる目的を指すようです。
しかし、「ゆっくり茶番劇」の名称については、そもそも特定の者の商標という認識はされていなかったため、フリーライドや希釈化といった不正目的は無さそうです。

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